雨男の日記

もう世の中に対して言いたいことなんて何一つありません

父親から電話が来た。

 

「手術の結果によってはもう歩いて話せる機会も少ないかもしれない。」

「下宿先は遠いだろうが弟に会ってほしい。」

 

いつもふざけてる父親が真面目にそう言った。

 

説明している途中で父親が泣いた。

 

嗚咽混じりの声に泣くのを我慢していた俺も泣いた。

 

弟の誕生日プレゼントのことは頭から消し飛んだ。

 

しばらく大学から帰り、下宿先で一人になると泣くような生活を繰り返した。

 

それからというもの普通の生活を送ってる中ふとこんなことを思っていた。

 

俺、こんなことしてていいんだろうか。

 

でも出来ることは待つしかなかった。

 

 

休日弟に会いに行った。

 

看護婦に支えてもらいながら歩く弟。

 

想像よりもずっと良い状態に見えた。

 

手術後の状態が良好で、治療は残っている腫瘍を消す方向にシフトしたらしい。

 

普通の病室に行く前は集中治療室にいたと父親が写真を見せてくれた。

 

悪い状況は僕の性格上何度も想定していたので、安堵したというか気が抜けた。

 

病名は胚細胞腫瘍。悪性。

 

長い期間かけて化学療法で転移しているだろうと思われる個所の治療を行うらしい。

 

弟は留年を気にかけていた。

 

手術後のせいなのか何度か同じ質問を繰り返すことがあった。

 

他はいつもと変わらない。

 

退院は順調に事が進めば夏の予定らしい。

 

最悪の事態にならなくて良かった。